場所は、表参道。季節を彩り、よく木々が芽生え、花の色が変わり、空気の冷たさもそれぞれ。そして、暮らす人たちの心境も移りゆく。少しだけ背伸びをしたような気分で歩いて行った通りの途中に、「パンとエスプレッソと」があるんです。
贅沢な一時を、何かあった時の特別なケースだけじゃなくて。日々の中にインストールしていけるような、努力をやっていきたいとする「株式会社 日と々と」が経営するパンとエスプレッソとの押しであるパンやエスプレッソの話を敢えて飛ばしてみて、カフェの雰囲気づくり、そしてインタビューから今まで見えてなかった”実はこんなとこ”を浮き彫りにしていきたいと思います。
パンとコーヒー。生活に溶け込んだ、毎日味わうものだからこそ、素材やクオリティにまっすぐこだわりたい。」 そんな想いのもと、バール&ベーカリー「パンとエスプレッソと」は生まれました。 パンとコーヒー。毎日食べても飽きの来ない味を、日々追求しています。
(出典): パンとエスプレッソと
ー まず、簡単にカフェ(パンとエスプレッソと)の説明をしてもらっても宜しいでしょうか?
分かりました。「パンとエスプレッソと」は来る人でいっぱいな原宿・竹下通りに比べると、一変静かな裏原宿のエリアにあります。この立地を選んだのには、「日常の中に、ちょっと贅沢を」という大切にしているコンセプトからです。もちろん、嬉しくも話題を聞きつけてやってくる方々もいらっしゃるのですが、ほとんど、このあたりで働いたり、暮らしている生活者さんたちに使っていただいています。
といっても、やっぱり場所は原宿です。カフェの激選区です。私たちは、そんな中、原宿クオリティを代表するようなハイクオリティを出すことを一番に意識しています。パンは決して、一般的には高級なものではありません。どちらかといえば、素朴で身近なものです。これをハイクオリティにして、お客様に提供をすることによって、「ありきたりだけど、特別!」という矛盾を実現していると考えています。
インタビューに応じて下さったのは、「パンとエスプレッソと」の宮下 七彩さん。もともと、短期大学の栄養科を卒業して、それからカフェの専門学校を出ているそうです。カフェとの出会いは、宮下さん自身がお客さんとして訪れたことでした。
カフェには大きくイタリアンと、シアトル式があって、私が学校で勉強したのはイタリア式でした。初めて、このカフェに来た時、私が習っていたコーヒーと全く同じものが出てきました。それで、スチームやカフェラテの質がとっても好きになりました。まず、ファンとして入ったのがきっかけなのです。
ー コミュニケーションというと、広いんですけど。お客さんとの接客で気を使っていることは何かありますか?
コミュニケーションですよね。例えば、レジで「ワインに合うパンはありますか?」と聞かれるようなことがあります。こうした何気ないお客さんからの会話にすぐに答えられるために、すごく勉強をするようにしています。お客さんに(もっとも合うパンを)提案できるように。
(私は)お客さんと直接、お話することはほとんどないのですが、常連さんなどはいらっしゃるので、その方には決まったものを言われなくても用意できるように覚えておくこと。それから、カップルで来られる方には、男性にはこの柄を、女性にはこの柄をと自然と使い分けを意識できるようにしています。
あとは、お客様によって、エスプレッソを変えているのもあります。
ー 変えているんですか?
そうです。名前にもあるように、「『パンとエスプレッソと』に来たからにはエスプレッソを飲みたい!」と、まるで京都にきたら抹茶を飲むような、観光的な要素もあります。そこで、初めて飲む人だったり、どれくらいコーヒーを普段飲まれるかをさりげなく聞いて、その人にあったエスプレッソを用意しています。
ー 話を変えます。ソーシャルメディアって普及していますよね。そうすると、人って「出会って話す」機会が減ってくるような気がするんですよね。LINEやFacebookがあれば、だいたいコミュニケーションって済むじゃないですか。それでも、カフェのような「出会って話す」場が減らない理由ってなんだと思いますか?
えっと。直接、カフェで出会うことで、必要な連絡だけではなくて「無駄なこと」を話しますよね。でも、インターネットとカフェ・・・。
ー あ、すみません。なんって言うんですかね。インターネットが出たことで、会った時の会話って変わった気がするんです。極限、僕はカフェの会話もインターネットで全部完結できることだとは思っているんです。それでも、人がカフェに集まるのはどうしてでしょう。
そう言われると、難しいですよね。共感から始まる話っていうのが、あるかもしれませんね。「このパン美味しいよね。」とか、同じコーヒーを飲んで、同じ空間にいるからこそ出てくる会話っていうのがあります。カフェは、そのツールとして。
ー 確かに、言われてみればそうですね。インターネットでは、会話しかできないけど、美味しいフレンチトーストを分け合うこともできるんですね。そういう空間を創りだせてるっていうのがパンとエスプレッソとにはあるんですね。
インパクトっていうのは、私の中では大切にしていて。インパクトのある商品を出す、インパクトのあるパンを食べてもらう。インパクトがあることによって、お客さんを弾むんですよ。テンションが上がる商品出すのは、私の中では重要で。例えば、うちのホットミルクって、すっごい表面張力をかけてというか、モリモリで出すんですよ。そうすると、ただのホットミルクなのにお客さんは食いつく。なんかそのお友達と来られる方の中で、お一人が頼まれると「なにそれ!?私もそれにすればよかった!」みたいな会話が生まれて、弾むのは嬉しいし、話の話題になれてる商品になっているのかな、と。そういうツールにはなっているのかなと思いました。
「パンとエスプレッソと」の魅力は行ってみて、フレンチトーストを食べてみれば、それが一番の理解できることです。どの記事を見ても、実際にカフェへ訪れてみても、そして取材をしてみても、やっぱり一押しは「商品のクオリティ」にあるんだなと思います。しかし、商品で勝負するという、そんな究極の一撃は、宮下さんやスタッフさんの妥協を許さないコダワリと、絶対にうちは他には負けないぞというプライドから生み出されてるのではないでしょうか。
これから、もっとインターネットが進んで、人との付き合い方が問われていきます。「わざわざ会う意味」がなければ、友達と会うこともないのかもしれません。そんな中で、「あそこのパン美味しいらしいよ。」という文句で出会う理由を作ってくれる。原宿で生きる人たちに、パンとエスプレッソとは、欠かせないものであり続けるのでしょう。